意見陳述書
1.はじめに
本日、最終弁論において陳述の機会をいただき感謝いたします。先に新川団長から爆音被害の歴史的、政治的背景について述べていただきました。私からは、私自身が日常的に受けている爆音被害について陳述します。内容は二点、夜間深夜爆音被害の実態と住民被害です。
2.夜間深夜爆音被害の実態
昨年2018年4月から11月までの夜間深夜の爆音被害で、私が実際に観測測定し映像でYOUTUBEにUPしたものは別紙のとおりです。1月平均4日、総計では33日の夜間深夜の爆音被害があります。
2013年から爆音被害映像をUPしていますが、中でも最悪のケースは以下のとおりです。(爆音が人体に与える影響一覧表を末尾に掲載)
①2016年10月19日午前2時30分 嘉手納米軍基地深夜の米軍戦闘機離陸。100.2db超の異常爆音

この状況について、当時のポール・オルダム基地司令官は爆音を撒き散らした戦闘機が米本国からの外来機であることを認め「第18航空団の指揮系統に属さず、上級司令部からの指示で、離陸調整の努力をしたが、駄目だった」(2016年10月22日付琉球新報)と述べています。
基地司令官でさえ止められない爆音。嘉手納基地から発生する爆音被害を、誰が止めることができるのか。
嘉手納基地周辺住民に対する人権侵害は、基地司令官でさえ止められないのが現状です。
(2)私が爆音を実際に観測測定し映像でYOUTUBEにUPする理由
嘉手納町では嘉手納基地からの爆音、悪臭等の基地被害については、爆音110番(時間外は留守電対応)を設け、住民からの苦情を受け付けています。私も当初は爆音悪臭等が撒き散らされる度に架電していました。しかし、いくら苦情の電話を架けたところで爆音は止まらない。爆音が撒き散らされる中で私たち基地周辺住民は爆音が収まるのをじっと待つ以外に手立てはない。怒りに震えながら耳をふさぎ、耐えるしかないのです。
私たちが110,119番に架電するのは火事を消したり、救急搬送したり、犯人を捕まえてもらったりと問題解決のために警察消防が対応してくれるからです。
ところが爆音はそうはいかない。
そこで私が考えたのがこの状況をSNSに載せて発信することです。それで効果があるのか、まったくわかりません。ただ嘉手納基地周辺住民の人権侵害の現状を世界に拡散することで何かが変わることを期待しています。
以上は午後10時から翌午前6時までの深夜の爆音の話ですが、YOUTUBEにUPした爆音動画は日常の爆音等についてUPしています。
2013年からUPした動画数は4200本余、再生回数は13万回を超えています。
今月10日(木)にも、午後10時ころから0時近くまで、70を超える凄まじい異常爆音が撒き散らされました。寝られるはずもなく、私は映像を撮り続け、YOUTUBEにもUPしました。

この状況は人権侵害の極致であり、これを救済し得ないという裁判所の姿勢はその責務を放棄していると言わざるを得ません。
それだけではありません。
沖縄では日常的に米軍機が私たちの頭上を飛んでおり、カメラを携行していれば、何時でも、何処でも、米軍機の映像を撮ることができます。
沖縄に暮らすすべての人が、常に米軍機の墜落の危険に晒され、爆音被害に曝されているのです。
3 住民被害
(1)嘉手納基地周辺住民の訴え
前述の爆音に対して、原告からは「爆音は我慢できない。爆弾が手元にあれば抱えて基地に突っ込みたくなる衝動に駆られる」とか「屋上から基地に向かってゴルフボールを打ちたくなる」などの怒りの声が上がっています。私も同感です。
爆音被害に喘ぐ嘉手納基地周辺住民の間には、無力感に満ちた、悲そうで自暴自棄な閉塞感が満ちています。
(2)放置され続ける爆音被害
このような爆音の状況は第1次提訴(1982年)から37年間も放置されてきました。
2014年4月3日衆議院安全保障委員会、原告でもある照屋寛徳議員の質問に小野寺防相は「嘉手納飛行場の航空機騒音につきましては、周辺住民の方々に多大な御負担をおかけし、大変深刻な問題であると認識をしております。」と答弁しました。
ところがその後日本政府は何ら手を打つことなく、それどころか嘉手納基地周辺騒音コンターの縮小を目論み、爆音被害の除去とは裏腹の基地被害の矮小化を図ろうとする始末です。爆音被害を解決するなどとは大よそ考えてはいない、としか言いようがありません。
(3)原告団による爆音被害除去を求める行動
原告団も爆音被害を除去するために様々な運動を展開しています。防衛省、外務省、環境省、国交省などへの要請行動や県や地元自治体、沖縄防衛局等への抗議要請行動を行っています。先に小野寺防相が述べたように爆音被害の深刻さへは理解を示すかのような発言はあります。省庁要請の際には、爆音状況のUP動画を見てもらいたい旨話していますが、外務省では担当官から前任者から引継ぎを受けているので時々見ていますとの返事を受けたこともあります。
沖縄防衛局での交渉でも、町内に居住する職員から夜間深夜の爆音被害の状況は肌に感じている、解決されなければならないとの発言がありました。それじゃどうするのか、との問うと、米軍にお願いすると繰り返すだけで具体的な解決策は何も示されない、これが現状です。
(5)直近の爆音被害、基地被害状況
最終弁論に向けて陳述書の準備を続けてきましたが、その間にも、新たな爆音被害、基地被害が発生しています。
1月23日には住民地域間近でのパラシュート降下訓練が強行されました。直ぐ近くには保育園幼稚園他、屋良小学校、嘉手納高校などもあります。危険極まりない訓練が繰り返されています。
1月28日(月)未明午前5時48分には、70.4dBの異常なエンジン調整、さらに米軍機が離陸し、凄まじい異常爆音が撒き散らされました。私自身も叩き起こされました。嘉手納基地周辺は、毎日が人権侵害の連続です。
①パラシュート降下訓練
②1月28日(月)午前5時48分70.4dBの異常爆音
(4)裁判所にのぞむこと
①民主主義を守るべき裁判所のあるべき姿
本裁判の1審判決では爆音被害について「原告らを含む一部少数者に特別の犠牲」とか「周辺住民に生じている違法な被害が漫然と放置されている」などとして日米両政府の不作為、爆音被害の放置を厳しく指摘しています。しかし、私たち原告が裁判所に求めているのは、爆音被害について無策の国の姿勢を厳しく糾弾し、私たち原告ととも怒りの拳をあげることではありません。私たちが求めているのは夜間の米軍機の飛行差し止めです。
民主主義国家においては自力救済が否定され、その代わりに国家が権利救済を図るとしています。その中において、裁判所は国権の一翼を担う機関として国民救済の最後の砦です。
爆音被害は私たち原告住民の力だけでは解決困難です。民主主義制度を守る国権の一翼として裁判所の矜持をみせていただきたい。そう強く願います。
2019年1月31日
第三次嘉手納基地爆音差止訴訟
原 告 福 地 義 広

(別紙)昨年2018年4月から11月までの夜間深夜の爆音被害