
昨日2019年9月11日、第三次嘉手納基地爆音差止訴訟の控訴審判決が、福岡高裁那覇支部で言い渡たされた。内容は、差止棄却、損害賠償については一審判決を大幅(約3割)減額。さらにフィリピン国籍原告の請求を退け、将来請求も認めなかった。
嘉手納基地周辺住民の被害を省みない極めて不当な判決と言わなければならない。
結果は以下のとおり。
(1)差止請求については「第三者行為論」を根拠に棄却。 裁判所は、原告らの人格権の直接侵害行為者は米国であるが、日米安保条約及び日米地位協定によれば嘉手納基地の管理運営権は米国に委ねられ、日本政府は米軍の航空機運航などを規制、制限することができる立場にない。したがって日本政府に対してその支配内にない第三者(米軍)の行為を差し止めを求めることはできない、とした。 自国の領土であり、しかも、日本政府が賃借し米軍に提供(又貸し)している土地であるにもかかわらず、日本政府の管理権が及ばないというのは間違っている。政府は米軍基地について自らの主権が及ばないと主張し、それを裁判所が追認している。行政・司法による主権放棄である。 (2)過去の損害賠償請求については認容したものの、一審判決の認容額を約3割、大幅に減額した。下表のとおりだ。不当判決と言わなければならない。
(3)将来の損害賠償請求については、不適法却下。原告は永遠に裁判を提起しなければならず、原告の被害救済にはならない。不当判決だ。 (4)フィリピン国籍原告については、相互保証がないとして棄却。同じ被害を受けながらその救済に、原告の国籍で差別するのは不当だ。 (5)爆音の違法性については次のように指摘する。 ①嘉手納飛行場周辺のかなり広汎な地域において、国の定める航空機騒音環境基準(環境省・航空機騒音環境基基準(Lden))が達成されていない。 ②北谷町砂辺及び沖縄市倉敷に居住する原告らは日常的に、環境庁方式w値85W以上の爆音に曝露されていると推認される。 ③・・・ 本件飛行場における合衆国軍隊の活動は,その周辺住民という一部少数者に各種の軽視することのできない被害を及ぼしている。そうすると,国民全体が利益を受ける一方で,原告らを含む一部少数者に特別の犠牲が強いられているといわざるを得す, こには,看過することのできない不公平が存する。このような不公平は、本件飛行場における米国軍隊の活動の公共性又は公益上の必要性をもっても、正当化することはできない。 ④騒音防止協定の少なからぬ部分が十分に履行されていない・・・。被告がアメリカ合衆国に騒音防止協定の履行を求める実行的な措置を具体的に採った事実を認めるに足りる証拠はない。 ⑤昭和4 0年代半ばには既に本件飛行場周辺で航空機騒音による影響が社会的に問題となっていたほか、平成1 0年と平成2 3年には、第1次、第2次と日本政府に損害賠償を命ずる判決が確定しているにもかかわらず、現在に至っても周辺住民が爆音被害に曝されている。 判決要旨はこちら控訴審判決要旨(365KB).pdf |