2022年5月16日、第4次嘉手納基地爆音差止訴訟原告及び第3次普天間基地爆音差止訴訟原告団は、合同で行政訴訟を那覇地方裁判所に提訴しました。請求内容は以下のとおり。
請求内容 1.米国に対して差止訴訟を提起できる地位等の確認を求める請求 2.(国交大臣に対して)航空法上の管制権の発動を求める請求 3.(1.2.が認めらない場合に備えて)原告が一定レベル以上の騒音に晒されないように、国は外交交渉を行う義務を有することの確認 |
両原告団によるこれまでの訴訟では、裁判所は、米軍基地の爆音は受忍限度を超えており違法なものと認定し、損害賠償金の支払いを国に命じてきました。しかし、夜間の米軍機飛行差止等については「第3者行為論(安保条約及び地位協定によれば嘉手納基地の管理運営権は米国に委ねられ、日本政府は米軍の航空機運航などを規制・制限することができる立場にない)」という屁理屈によって認めてきませんでした。
これについて、沖縄国際大学の前泊教授は、いじめを受けている子どもの訴えに、いじめは違法だからいじめっ子は損害賠償金を支払いなさい、と命じながら、いじめ自体を止めなさいとは言えない、というのに等しく不条理である、と厳しく批判しています。正にその通りだと思います。
沖縄の本土復帰50年にあたり「何が変わり、何が変わらなかったか」という指摘がありますが、もっとも変わらないのが沖縄の米軍基地であり、基地被害を押し付けられてきた沖縄県民の生活です。そして、基地被害の最たるものが爆音被害です。
今回の行政訴訟は、米軍の爆音による基地被害を放置している国の不作為ないしは作為が違法若しくは違憲であるとの判断を求めるものです。
ところで、嘉手納・普天間両基地の距離をごぞんじだろうか。距離は約10㎞(下の地図をご覧ください)。両基地を中部全体でとらえるとき、本島中部が3本の滑走路を有する広大な米軍基地だと捉えることが可能です。両基地の被害は中部地域全体に及んでいます。嘉手納基地から離陸した米軍機は宜野湾市、浦添市までの爆音被害をまき散らしていますし、欠陥機オスプレイは普天間・嘉手納両基地の間を行き来しています。
爆音被害は中部のみならず、南部・北部地域まで拡大しています。
この実態から、今回両原告団が合同で行政訴訟を提訴したことは、米軍基地被害を沖縄全体としてとらえることにつながるのではないか。市民運動の大きな拡がりを予感させます。
今提訴が、基地問題を沖縄全体の問題としてとらえる好機になります。基地反対、基地撤去、基地の整理縮小、県民の生活空間・生産の場所の拡大に向けてあらたな運動の拡がりを期待したいと思います。
行政訴訟が復帰50年の節目に提訴されたことは、50年経過しても基地が何も変わらないことえの沖縄の不満が凝縮されていると物語っています。今後の5年、10年、20年は沖縄が基地を返せとの声を上げることが重要です。
基地と経済はリンクしているとを本政府言っています。ならば、基地受け入れの見返りは不要、土地を返せ、土地だけではない上空をも含めた生活空間を返せとの声を上げる必要があります。
沖縄が腹を括って主張する。その覚悟が、今後求められると思います。
(2017/02/26)静かな夜戻らず、差止またも認めず、健康被害一部認容、爆音五度目断罪〜第三次嘉手納基地爆音差止訴訟 2月23日判決〜
(2017/05/04)嘉手納飛行場と普天間飛行場の距離は約10Km。こんなにも近距離かつ住民地域に隣接する危険な基地だ。人権侵害だ!