復帰40年記念式典に参加した鳩山元首相への琉球新報(聞き手:松元政治部長)の単独インタビューが5.16付同紙に掲載された。鳩山氏は県外移設を掲げたことについて当然のことだと述べ、実現できなかったことについて「大変申し訳なく思っている」とあらためて陳謝した。以下は、同紙からの抜粋である。
―復帰40年の節目を迎えた沖縄をどう見るか。 「復帰40年を心から喜べない県民が多くいる。総理大臣だった人間として責任を痛感する。その大部分が米軍基地問題であり、ここをクリアしていくことが政府の最大のテーマだ」 ―世論調査で県民の7割、全国の3割余が沖縄への基地集中について「不平等」と回答した。 「まさに不平等だ。ただ、本土では3人に1人しか不平等と思っていない。・・沖縄の人たちが差別されていると思うのは当然だ。74%もの基地集中は明らかに偏り過ぎ。早く普天間基地を全面返還させ・・。・・固定化は絶対にあってはいけない。万一大きな事故があれば、日米安保そのものが覆される。危機感があるのは、日本政府より米国と感じる」 ―県外移設を掲げたことはどう振り返るか。 「県外移設を掲げたのは当然のことだ。期待を掛けた県民に応えられず、大変申し訳なく思っている」 ―県外移設が実現できなかった最大の要因は。 「防衛、外務官僚はいかに辺野古に戻すかに腐心していた。県外移設はおかしいと、むしろ米側を通して辺野古でないと駄目だという理屈を導いたようだ。政治主導で、オバマ大統領との直接対話など、官僚を飛び越えた議論ができなかった。私の力量不足だった」 ―辺野古移設は不可能ではないか。 「辺野古移設を貫くことはは結果として普天間の固定化につながる恐れがある。より現実的な道筋、日米間で新たな合意をする努力が必要だ。米側が柔軟に対処し始めており、新たな合意をつくる好機だ。日本が働き掛け、米国と仕切り直す必要がある。」 ―米海兵隊の豪州などへの新たなローテーション配置は一体運用による「抑止力」と矛盾しないか。 「むしろその(ローテーション)の方が世界の安全保障にとってプラスという議論になってきている。分散型配備で、より安全を高める議論が出てきたことは望ましいことだ」 ―今の動きは『駐留なき安保』への布石にも感じる。 「その方向が見えてきたと思っている。常に米軍が基地の中に存在しなくても、有事に備え、行動することがあり得る話になってきた」 ―米議会有力者が辺野古は不可能とみなしている。 「米議会が声を出し始めたことは重要な動きだ。情けない話だが、日本の官僚は常に米側を見ていて、米側が変化を遂げれば、日本も変化する可能性がある。本来は日本の議会が(その動きを)とらえ、現実的な答えを見いだす努力を早急に始めるべきだ」 |
鳩山氏の「最低でも県外」発言は、沖縄の本音を表出された点において功績である。実現できなかった点においては、同氏も認めるとおり完全に沖縄の期待を裏切った。
式典における野田首相の普天間固定化を避けるために辺野古移設を推進するとの議論は沖縄では、もはや、通用しない。本土大手マスコミが、「普天間は辺野古移設で一件落着」とすでに終わった議論として扱おうとしているが、沖縄では「普天間の辺野古移設は不可能」との結論が出ている。この意識の差は大きい。
式典での上原康助氏(元沖縄開発庁長官)のあいさつは、沖縄の民意そのものであるが、沖縄外のマスコミは一切報道しない。(本HM記事“5.15復帰40年を考える(沖縄の民意を代弁した上原康助氏の式典あいさつ)”参照)
この差が、沖縄と本土との意識の差であり、これが沖縄の指摘する「沖縄差別」である。
沖縄は沖縄の声を挙げ続けるとともに、本土がその意識を変える必要がある。