玄葉外相は、退任直前の12月26日の記者会見で、記者から前日の森本防相発言「軍事的には沖縄でなくても良いが、政治的に考えると、沖縄がつまり最適の地域である」について問われ、「大きな理由はやはり地政学的な理由だ」と述べた(当HM記事普天間基地の辺野古移設「軍事的には沖縄でなくても良い・・」の真意〜退任直前(12.25)の森本防相発言〜参照)。本来なら内閣不一致で大騒ぎになるところだが、両人ともすでに大臣の座を辞している。
ここで重要なのは防衛、外務両省において沖縄の基地問題に関する基本的認識が異なっているという点だ。
本土防衛を基本任務とする防衛省は、いわゆる地政学的(goo辞書検索:民族や国家の特質を、主として地理的空間や条件から説明しようとする学問)見地から沖縄に米軍基地が存在する必要性はないとする。日本国内において米軍基地を受入れる場所が存在しないという政治的理由から沖縄が一番落ち着きがいいとの見解だ。簡単に言えば今あるところに新基地建設を進める方が手っ取り早いということ。
前日の森本防相の発言は、沖縄の基地問題の解決が遅れているのは政治の責任であることを指摘したものと言える。
これに対して、玄葉外相の発言は、あくまでも政治の責任回避に終始した発言である。会見の中でパッケージ論を見直し「嘉手納以南の土地の返還」について尽力したと述べているが、同地の返還にあたり基地機能の統合のめどが立たなければ返還は困難との見解を表明したのも玄葉外相だ。
防衛省と外務省の意見の対立が表面化した今、新政権が沖縄の基地問題解決に向けてどのように取り組むのか。
いずれにしても、沖縄は、ひるむことなく、沖縄の民意を、沖縄の声を挙げ続けることが必要だ。
以下は外務省HM外務大臣会見記録(要旨)平成24年12月26日(クリックで同HMへ)からの抜粋である。
米軍再編問題 【琉球新報 問山記者】昨日、森本大臣の会見で、「軍事的に沖縄でなくても良いが、政治的に考えると沖縄が最適な地域」という発言があり・・、地政学的な観点というよりも、政治的に受け入れる土壌が沖縄にあるということで普天間の移設先として決定したと・・発言があったのですが、・・どうお考えになっているかという1点と、地元の名護市や県知事、今回の衆院選で当選した当選者も全て県内移設に反対しています、・・現状から県内移設、辺野古移設は可能だというようにお考えでしょうか。それと、この任期中、先日補正された環境影響評価の評価書が県に提出されましたが、この普天間の移設問題が進展したというようにお考えでしょうか。3点お願いします。 【玄葉大臣】まとめてお答えいたします・・、私(大臣)は日米安保、そして、その負担というのは、全国で分かち合うべきであるというのが持論・・。ただ、今、沖縄に負担を担っていただいている、その大きな理由はやはり地政学的な理由だというように私(大臣)は思ってお願いをしているということです。ただ、抑止力を維持しながら、負担を軽減するということは可能だというように考えており・・、・・この間も嘉手納以南の土地の返還に熱心に取り組んできた・・。まとまるところまでだいたい来ているわけであります。 先ほど申し上げたように、グアムへの海兵隊の移転も、普天間の問題が全く進まなければ移転はないというのがこれまでだったわけでありますけれども、それはそれで進めるということで、いわば負担の軽減を先にしていくということを行ったわけであります。私(大臣)は、これからその実はあがってくるのではないかというように思っています。 ですから、そういう軽減の努力をどのような立場になっても引き続き行いながら我が国の安全保障の観点も見据えつつ、沖縄の皆さまの理解を得られるように、また別の立場になっても努力していきたい・・。 |