主観的願望で動く政治(4.13付佐藤優氏のウチナー評論より)
4月13日付琉球新報に掲載された佐藤優氏のウチナー評論「念力主義〜主観的願望で動く政治〜」は日本政府が抱いているという淡い期待、「仲井真・・知事が辺野古移設容認に転換するという主観的願望」について、厳しく非難している。以下は同記事からの抜粋である。
・・東京の政治エリート(国会議員、官僚)が沖縄との関係において、現在も念力主義で動いていることが、『世界』(岩波書店)5月号に掲載・・された久江雅彦氏(共同通信ニュースセンター整理部長)・・の論文「潮目の変化を迎えた普天間飛行場移設問題」が浮き彫りにしている。・・久江氏はこう記す。〈沖縄県は埋め立て許可の是非を八〜一〇カ月かけて判断する。来年一月にも予定される名護市長選挙の前に知事の態度を軟化させて、許可を得るシナリオを描く。 複数の日本関係者によると、表向き県内移設に反対する仲井真はこれまで政府、与党要人との内々の会談では、県連・・の理解が得られるなど条件が整えば、埋め立て申請を許可する可能性を強く示唆してきた。これが、政府サイドに淡い期待を持たせてきた最大の理由だ。〉 |
上記記事にいう、仲井真知事が辺野古埋立申請許可の条件とする「県連・・の理解が得られるなど条件」について、沖縄の現状に則して考察してみる。
①自民党沖縄県連の意向
4月6日、自民党県連は、同大会で、米軍普天間飛行場の県外移設を推進する政策案などを採択した。これにより、先の知事選挙・宜野湾市長選挙・衆議院選挙で掲げてきた米軍普天間飛行場の県外移設の公約を維持することになった。(詳細は当HM記事“自民党沖縄県連「普天間飛行場の県外移設」推進決定〜菅官房長官は評価せず?”参照)
②佐喜真宜野湾市長の意向
普天間飛行場を抱える宜野湾市の佐喜真市長は、県議会議員時代は辺野古移設推進を唱えていたが、同市長選挙では辺野古移設反対を主張をして当選した。そして、早急な普天間飛行場の危険性除去を訴え、移設先については日本政府の責任であると主張する。昨年9月9日の“オスプレイ配備に反対する県民大会”において、佐喜真宜野湾市長はあいさつの中で「宜野湾の空にも、嘉手納の空にも、沖縄の空にもオスプレイ飛ばさない」と述べ参加者の喝采を浴びた。普天間飛行場はオスプレイ配備飛行場であり、その移設は同機の配備を意味してる。したがって、「沖縄の空にオスプレイを飛ばさない」という佐喜真市長の決意は普天間飛行場の辺野古移設を否定を意味する。(当HM記事オスプレイ配備阻止 “9.9オスプレイ配備に反対する県民大会”へ参加しました〜仲井真知事のメッセージに“止めろ、止めろ”のヤジ〜参照)
③仲井真知事の意向
普天間飛行場の辺野古移設は事実上不可能であるとの意見だ。今月12日の記者会見でも「沖縄県以外の滑走路がある余裕のある飛行場はそれなりにあり、そこを頭に入れて日米両政府が取り組まないと時間だけが経ってしまう」と指摘している。つまり、現状のままでは普天間飛行場の固定化につながりかねないとの懸念を示している。
普天間飛行場の移設問題について、仲井真知事は、最近の政府要人等との会談を、県庁ではなく那覇市内のホテルで、しかも非公開で続けてきた。この事実が様々な憶測を呼び、知事の発言が政府に淡い期待を抱かせるきっかけとなった、と推測する。
しかし、民主党政権樹立の総選挙以降、普天間飛行場の辺野古移設反対、基地削減、基地負担軽減等の沖縄の民意に変化はない。むしろ、オスプレイ強行配備、度重なる米兵犯罪・事故等の状況の中で、強固になってきている。先の総選挙、7月の参議院選挙で自民党沖縄県連が、普天間飛行場の辺野古移設反対等の沖縄の民意に沿った公約を掲げているのは、正にその表れだ。
沖縄の民意を無視することは議席を失うことであり、揺るぎない沖縄の民意に沿った政策を掲げることが、沖縄の活きていく途であることを、日本政府は承知すべきである。