久しぶりです 井上陽水の「帰れない二人」

2014-10-13

 私の大好きな曲ですが、年を経るにつれて感じ方が違ってくるのは不思議です。脇目も振らずに恋をしていた時と違って余裕がある、のかもしれません。余裕というより諦めかな、とも思いますが確かに変わってきました。

 帰れない二人は、このままどうなってしまうのか。帰れない二人のみぞ知る、というところでしょうか。

    帰れない二人(井上陽水)

おもったよりも夜つゆは冷たく 二人の声もふるえていました 

はあ・・・・・ はあ・・・ 

「ぼくは君を」と言いかけた時 街の灯りが消えました 

もう、星は帰ろうとしている 帰れない二人を残して 

 

街はしずかに眠りを続けて 口ぐせの様な夢を見ている

はあ・・・・・ はあ・・・ 

むすんだ手と手の温もりだけが とても確かにみえたのに 

もう夢は急がされている 帰れない二人を残して

 

はあ・・・・・ はあ・・・

もう、星は帰ろうとしている 帰れない二 人を残して

うううう・・・・・・・・・・・ 

      ある日突然

ある日突然 二人だまるの
あんなにおしゃべりしていたけれど
いつかそんな時が来ると 私にはわかっていたの

ある日じっと見つめ合うのよ
二人はたがいの瞳の奥を
そこに何があるか急に知りたくて おたがいを見る

 

ある日そっと近寄る二人
二人をへだてた壁をこえるの
そして二人すぐに知るの さがしてた愛があるのよ

ある日突然愛し合うのよ
ただの友だちがその時かわる
いつか知らず胸の中で育ってた 二人の愛

 ひさしぶりの掲載である。

 上記の詩はトワ・エ・モアが歌った「ある日突然」である。この曲が流行ったころ、まだ、幼かった私には、この詩の意味など分かるはずもなかったが、やさしいメロディーに乗せられたこの詩はなぜかこころに残っていた。人生経験の中で、何回かこの詩に触れるうちにこの詩の表現する世界が見えて来る。ある日突然のある日とは、決して幾日かの期日を経てやってくるものではない。ほんの一瞬の中に、ある日は突然にやってくる。瞬間のひらめきというか、抑えられない衝動というべきか。ただの友だちが、その時、確かに変わるのである。

 この後二人がどうなるのか。

 知的エロチシズムにふさわしく、後は、読み手の想像力に任せることにしよう。

 「四年はしかし長いね。」

 「過ぐに経ってしまいますわ。」

 「温い。」と、島村は駒子が近づいて来るままに抱き上げた。

   〜

 轡虫(くつわむし)が急に幾匹も鳴き出した。

 「いやねえ。」と、駒子は彼の膝から立ち上がった。

 北風が来て網戸の蛾が一斉に飛んだ。

 黒い眼を薄く開いていると見えるのは濃い睫毛(まつげ)を閉じ合わせたのだと、島村はもう知っていながら、やはり近々とのぞきこんでみた。

 「煙草を止めて、太ったわ。」

 腹の脂肪が厚くなっていた。 

 離れていてはとらえ難いものも、こうしてみると忽(たちま)ちその親しみが還ってくる。

 駒子はそっと掌(てのひら)を胸へやって、

 「片方が大きくなったの。」

 「馬鹿。その人の癖だね。一方ばかり。」

 「あら。いやだわ。嘘、いやな人。」と、駒子は急に変った。これであったと島村は思い出した。

 「両方平均にって、今度からそう言え。」

 「平均に? 平均にって言うの?」と駒子は柔らかに顔を寄せた。

 この部屋は二階であるが、家のぐるりを蟇(がま)が鳴いて廻った。一匹ではなく、二匹も三匹も歩いているらしい。長いこと鳴いていた。

 直接的な性描写ではなく、影絵に映る性の営みを表現する筆使いは見事である。愛人関係ともいうべき島村と駒子の戯れのひと時に日常の一こまを垣間見る。轡虫(くつわむし)や蟇(がま)がの鳴き声がなんとも物悲しい二人の関係を描いている。

 仄(ほの)暗い湯殿の奥から、突然裸の女が走り出して来たかと思うと、脱衣場の突鼻に川岸へ飛び下りそうな格好で立ち、両手を一ぱいに伸して何か叫んでいる。手拭もない真裸だ。それが踊子だった。若桐のように足のよく伸びた白い裸身を眺めて、私は心に清水を感じ、ほうっと深い息を吐(つ)いてから、ことことと笑った。子供なんだ。私たちを見つけた喜びで真裸のまま日の光の中に飛び出し、爪先で背一ぱいに伸び上るほどに子供なんだ。私は朗らかな喜びでことことと笑い続けた。頭が拭われたように澄んで来た。微笑がいつまでもとまらなかった。
 ・ 
 ・
 これは、幾度となく映画化された川端康成の伊豆の踊子の1シーンである。思春期の女の子が真裸で両手を広げて手を振っている。清々しさを感じる半面で、心惹かれる場面である。

 もう三時間もまえのこと、島村は退屈まぎれに左手の人差指をいろいろに動かして眺めては、結局この指だけが、これから会いに行く女をなまましく覚えている、はっきり思い出そうとあせればあせるほど、つかみどころなくぼやけてゆく記憶の頼りなさのうちに、この指だけは女の感触で今も濡れていて、自分を遠くの女へひきよせるかのようだと、不思議に思いながら、鼻につけて匂いを嗅いでみたりしていたが・・・。
 ・
 ・
「あんたは寝なさい。さあ、寝なさいったら。」
「君はどうするんだ。」
「こうやってる。少し醒まして帰る。夜のあけないうちに帰る。」と、いざり寄って島村を引っ張った。
「私にかまわないで寝なさいってば。」
 島村が寝床に入ると、女は机に胸を崩して水を飲んだが、
「起きなさい。ねえ、起きなさいったら。」
「どうしろって言うんだ。」
「やっぱり寝てなさい。」
「なにを言ってるんだ。」と、島村は立ち上がった。
 女を引き摺って行った。
 やがて、顔をあちらに反向(そむ)けこちらに隠していた女が、突然激しく唇を突き出した。
 しかしそのあとでも、寧ろ苦痛を訴える譫言(うわごと)にように
「いけない。いけないの。お友達でいようって、あなたがおっしゃったんじゃないの。」と、幾度繰り返したかしれなかった。
 島村はその真剣な響きに打たれ、額に皺立て顔をしかめて懸命に自分を抑えている意志の強さには、味気なく白けるほどで、女との約束を守ろうかとも思った。
「私はなんにも惜しいものはないのよ。決して惜しいんじゃないのよ。だけど、そういう女じゃない。私はそういう女じゃないの。きっと長続きしないって、あんた自分で言ったじゃないの。」
 酔いで半ば痺れていた。
「私が悪いんじゃないわよ。あんたが悪いのよ。あんたが負けたのよ。あんたが弱いのよ。私じゃないのよ。」などと口走りながら、よろこびにさからうためにそでをかんでいた。・・・

 この物語を私が初めて読んだのは大学生になってからだ。入学して初めて古本屋なるものが存在し、市価の半値以下で本が手に入ることを知った私は本を買い漁った。その時手にしたのがこの本である。
 川端康成作の雪国である
 高校を卒業したばかりの私には冒頭の人差指の話など理解できなかったに違いないのだが、今年で50歳になるに至るまで、この人差指のくだりが妙に記憶に残っていたのは、青年期の性衝動いっぱいの私の記憶に刻みつけられたからに違いないのだ。

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