参議院選挙を前にした先月、6月29日、閣議後の記者会見で、仙石官房長官は普天間飛行場移設問題に関する沖縄の民意について、次のように述べた。「国政選挙で限定された民意をどう推し量るかは大変難しい。普天間の是か非かではなく、医療、教育、経済などいろんな要素を含んでいる。」として、選挙結果が直接影響を及ぼすことはないとしながらも「(現在の普天間問題の状況について)県民とって不本意かもしれないが、歴史的な(沖縄戦の)犠牲と基地の集約による被害は、国民の多くが客観的に見ている」として、沖縄のこれまでの基地負担の状況が過重であることには理解を示した。
同日、岡田外相は記者会見で、嘉手納基地に外来機が相次いで飛来し、爆音被害が増加していることについて「(外来機の配置)は基本的にはアメリカの判断」とした。その一方で、訓練を移しても外来機の飛来が増えていることは事実なので、負担軽減を日米間で議論していかなくてはならない、と述べたという。
上記の沖縄の基地問題に関する発言に共通しているのは、基地被害の発生、拡大が現存していることは認めるものの、その解決策を持たないということである。沖縄の基地負担の歴史についても認知しているものの、それに対する解決策は何ら示されない。
この見解は裁判所でも同じである。嘉手納、普天間爆音訴訟でも、裁判所は基地被害による損害賠償は認めるものの被害の源である飛行機の飛行制限の訴えについては認めていない。高度に政治性を有する問題であり、その解決は政治に求めるべきであるとの判断である。
ところが、その政治も、有り様は同じである。岡田外相のいう「基本的にはアメリカの判断」というのが結論である。
沖縄全戦没者追悼式で菅首相は、沖縄の基地負担の歴史について謝罪し、感謝した。しかし、その次に口にしたのは、基地負担軽減策を講じるから、負担ついでにもう少し負担してもらえないか、ということ。
民主党は、参議院選挙での苦戦が伝えられている。結果はどうなるのか分からないが、新しい政権は少なくとも、沖縄の民意を再確認し、まっとうな沖縄の基地負担軽減策を示すことを期待する。