福岡高裁那覇支部(多見谷裁判長)の豹変ぶり。これは驚きだ!!!
代執行訴訟での福岡高裁那覇支部の和解勧告文。そこに記された同支部の問題意識は沖縄の置かれた状況について理解を示していた、と思った。同支部は次のように指摘した。
「平成11年地方自治法改正は、国と地方公共団体が、・・・対等・協力の関係となることが期待されたもの・・。このことは法定受託事務の処理において特に求められる・・。(県と国と対立は)同改正の精神にも反する状況になっている。」そして、「本来あるべき姿・・は、沖縄を含めオールジャパンで最善の解決案を合意して、米国に協力を求めるべきである。そうなれば、米国としても、大幅な改革を含めて積極的に協力しようという契機となりうる。」と。
さらに和解条項第8項は「原告および利害関係人と被告は、是正の指示の取消訴訟判決確定まで普天間飛行場の返還および本件埋立事業に関する円満解決に向けた協議を行う。」とした。円満解決に向けた協議は県・国双方の和解上の義務である。
さらに、国地方係争処理委員会は「国と県は米軍普天間飛行場の返還という共通の目標の実現に向けて真摯(しんし)に協議し、双方がそれぞれ納得できる結果を導き出す努力することが問題解決に向けての最善の道である」として判断を示さず、協議を続けるよう求めた。
ところが、国は、同委員会の声には耳をかさず、不作為の違法確認訴訟を提訴した。国の提訴は、福岡高裁那覇支部及び国地方係争処理委員会の意思を無視した行為であり、さらに、裁判所に対して審理を集結し早期の判決を求めた。司法等無視の暴挙としかいいようがない。
ところが、福岡高裁那覇支部(多美屋裁判長)は国の早期結審の意を酌み、9月にも判決を言い渡すとの訴訟指揮をした。しかも、第1回口頭弁論では「本件訴訟は代執行訴訟での和解の枠組みの中にあるか」「(和解の枠組み内)であれば是正指示に対して地方公共団体は期間経過後、争うことができないとなった場合は(是正指示が)確定してしまう」「仮に不利な判決であったとしても従っていただけるのではないか」など、国の主張に沿ったような質問を県に対して連発した。何故か?
そもそも、代執行訴訟と不作為の違法確認訴訟は訴訟物を異にし、審理の対象が異なる。まさか、国の是正指示に対する、県の異議申し立て期間が徒過し、是正指示が確定しているとして、県敗訴の判決を目論んでいるのか。まったくいかがわしい。
意見陳述に入る前の国の請求の趣旨の追加がこれを目途としたものであれば、福岡高裁那覇支部の訴訟運営はあまりにも公平を欠く訴訟指揮だ。
沖縄の基地問題について、故梶山氏は、1998年書簡で、「キャンプシュワーブ外に候補地を求めることは必ず本土の反対勢力が組織的に住民投票運動を起こす事が予想され・・。・・名護市に基地を求め続けるよりほかは無い・・」と発言した。
さらに、森本前防相は2012年12月25日の記者会見で、記者から「普天間の辺野古移設は地政学的に沖縄に必要だから辺野古なのか、それとも本土や国外に受入れるところがないから辺野古なのか」との質問に対して、「軍事的には沖縄でなくても良いが、政治的に考えると、沖縄がつまり最適の地域である」と答えた。
いずれも政権与党として現職閣僚を務めていた際の、現職閣僚の発言だ。沖縄以外に日本国内で基地を受け入れるところは無い。つまり、政権を維持するためには在沖縄米軍基地の県外移転は禁句(タブー)だということだ。
故梶山氏、森本氏の発言からすれば、沖縄の基地負担軽減のためには政治の力は期待できない。1対46の日本の民主主義の状況では沖縄の基地負担軽減は実現不可能だ。
司法による救済なしには、沖縄の基地負担の軽減を図ることはできない。
福岡高裁那覇支部(多見谷裁判長)は、早々の結審の訴訟指揮を覆し、実質審理を行うべきである。仲井真知事の埋立承認の違法性、翁長知事の埋立承認取消し適法性について実質審理しなければならない。