通常、私たちは自分の財産をどのように処分しようが自由です。自分で使ってしまおうが、他人に贈与しようが自由です。そして、遺言を残すことによって、その自由な処分を死後にも及ぼすことができるのです。ところが、遺言ですべての財産をただ1人に遺贈した場合どうなるでしょう。相続できるものと考えていた家族はどうなるのか。
このときの出てくるのが遺留分制度です。民法には次にように規定されています。
民法1028条:兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に応じてそれぞれ
当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の1/3
二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の1/2
つまり、仮に1人に全財産を遺贈するとの遺言があっても、
相続人が直系尊属のみの場合は財産の1/3、
それ以外、つまり配偶者や子供の場合は財産の1/2について遺留分として受領する
ことができるのです。
例えば、長男に全財産を相続させるという遺言があった場合、配偶者や他の子供たちは少なくとも全財産の1/2については遺留分として受領する権利があります。そして、配偶者や他の子供たちはその1/2から自らの法定相続分に該当する分を受領することができるのです。
遺留分請求をして話し合いがつかないときは裁判所で判断をしてもらうことになります。その際の手続きの種類は次のとおりです。
①遺留分減殺請求調停(家庭裁判所へ)(参考サイト最高裁HMこちらをクリック)
②遺留分減殺請求訴訟(地方裁判所へ)(参考サイト最高裁HMこちらをクリック)
現実の場面ではどのように解決するのか困難な場面が多いかもしれませんが、最終的にはお互いの互譲の姿勢がなによりも大事になります。被相続人が家族のために残した遺産が原因で家族の諍いが発生するというのは何とか避けたいものです。