選抜の沖縄県代表の興南高校が、東京都代表の日大三校を破り、初の選抜制覇を成し遂げた。
序盤は制球に苦しむ島袋を、日大三校が攻め立てる。2回表、島袋自らのけん制ミスにより2点を献上し、3回にはホームランで1点を奪われた。好守の興南高校に、得点には結びつかないもののレフトの落球等のエラーが続く。序盤の3点で試合の主導権は完全に日大三校にいったかに見えた。
しかし、徐々に調子を上げた島袋に打線が応える。5回表に1点、6回表に4点をもぎ取った興南高校が逆転した。ところが日大三校も負けてはいない。逆転されて直後に2点を入れて5対5の同点となった。中盤からは一転興南高校ペースになったかと思ったが、同点となった試合は振り出しに戻る。
終盤7回以降は両投手の投げ合いとなった。延長戦に入っても丁寧に投げ合う両投手に、試合は膠着状態となった。
延長11回裏、試合が動いた。日大三校大塚が四球で出た。ノーアウトランナー1塁、サヨナラのランナーである。ここで、島袋の真骨頂が出た。2つの送りバントをセカンドで刺したのである。バント処理の巧みさは内野手顔負けである。これで、興南高校の攻撃に弾みがついた。
延長12回表、眞榮平の1塁ゴロを投手の山崎が落球。捕手のパスボールの間に眞榮平は2塁へ。ワンボールの後投手交代、日大三校は二塁手の吉沢をマウンドへ。吉沢はストライクが入らず2個の4球でワンアウト満塁。続く安慶名のあたりはボテボテの三塁ゴロ。これまで再三の好プレーで興南高校の攻撃を封じてきた名手横尾の前へボールが転がる。誰もが、ホームゲッツーのダブルプレイを予想したに違いない。ところが、送球はキャッチャーの手前でワンバウンド。あわてたキャッチャーが補給できず、決勝点となる2点が入った。その後、島袋、大城滉と続き3点を追加して逃げ切った。
甲子園について語られるとき、甲子園には魔物が住んでいると表現されることがある。現役を引退した桑田氏は甲子園はそれまでできなかったプレーまでもさせてくれる不思議な力を持っているところと語っていた。逆もまたしかりである。魔物という表現は、”何が起こるか分からない”という野球表現を分かりやすくしたものであろうが、昨日の決勝戦は、まさにそれを証明してくれたように思う。
2回裏の日大三校の2点はエラーがらみでノーヒットでの得点だし、12回表の興南高校の決勝の2点もエラーがらみでノーヒットでの得点だ。
これまで、少年野球からプロ野球までたくさんの試合を見てきたが、これほどハラハラさせられた、何が起こるか分からないという期待と不安を持たされた試合を見たのあまり記憶がない。
投手の調子があまり芳しくない中で、守備が乱れると、試合が壊れていくことが多いが、辛抱強く自分の投球を続けられる島袋投手は大したものだと思う。
興南高校の選手・監督に大きな拍手を送りたい。