20日に行われた仲井真知事と平野官房長官の会談は、普天間飛行場の移設先に関する政府の動きを知る好機と思われたが新聞報道で知る限りのその内容は極めて抽象的で分かりにくい。特に平野長官の「常にベストを求めていくが、やっぱりベターになるかもしれない」との発言は県外移転を模索しているが、やっぱり当初案の辺野古にこだわるしかないと解釈するのが素直だとすれば、昨年8月以降の政治の動きが振り出しに戻ったことになる。
もとをたどれば、当初の辺野古陸上案が軍用機の爆音被害を減らすために、沖合に海上基地を造る案が出され、それが埋立案に替わってきた。この経緯を考えれば、新辺野古陸上案は新ではなく、原始案と言ってもいい。この案が住民の理解を得られるとはとうてい考えられない。
新辺野古陸上案にしても、基地負担、騒音被害の軽減が前提との発言も相次いでいるが、演習移転が実現しても、その空いた時間には他基地航空機の演習が組み込まれてくる現状では辺野古移転を実現するために演習を他基地に移転させる案も住民を納得させることは、到底不可能である。ましてや、期限を15年に限るという案など誰も信用しない。
このような状況の中で、今夏の参議院選挙の生命線である普天間飛行場移設問題について鳩山民主党政権がどのように解決しようとしているのか見えてこない。見えてこないならば、沖縄の民意の発信はさらに重要である。平野官房長官との会談において、仲井真知事が県外移設が最も望ましいと考えている、と発言したのは前進である。しかし、今後、基地返還が間違いなく進んでいくと予想される現状において、沖縄の将来を見据えた沖縄の覚悟をも示して欲しいと思うのは私だけではないだろう。