2月23日に言い渡された第三次嘉手納基地爆音差止訴訟(対日)判決。
「静かな夜戻らず!」「差止またも認めず!」「健康被害一部認める!」「爆音、五度目の断罪!」
爆音の違法性については厳しく断罪しながら、米軍機の夜間飛行差し止めには踏み込めなかった判決。
爆音被害・違法性、爆音放置の状況について判決は如何に判断したのか。爆音対日判決要旨.pdfから見たい。
判決は、コンター75W値以上の地域の爆音被害の甚大性について指摘したうえで、国の定める航空機騒音環境基準が達成されていないこと、その被害が基地周辺住民の一部少数者に特別の犠牲が強いられていると指摘し、そこには「看過することのできない不公平が存する」と指摘する。
さらに、昭和40年代から指摘されてきた甚大な爆音被害について、根本責任が米国にあることを指摘し、米国および日本が有効策を取ってこなかったこと、そして、実際にも平成8年に合意された航空機騒音規制措置(騒音防止協定(嘉手納・普天間平成8年).pdf)についても履行されておらず、さらに、日本が米国に対して規制措置の履行を求めた形跡もないと厳しく指摘した。
第一次嘉手納爆音訴訟から4度にわたる爆音の違法性判決にもかかわらず、米国及び日本の被害防止対策に特段の変化は見られず、周辺住民に生じている違法な被害が漫然と放置されていると指摘した。
那覇地方裁判所沖縄支部は、50年以上も「看過することができない不公平」な基地被害を放置する日米両政府の責任を、厳しく指摘した。しかし、米軍機の夜間飛行差し止めについては第三者行為論を理由として認めなかった。
判決後の会議で「今回の判決は、損害賠償責任についてはほぼ及第点に近いが、飛行差し止めについては0点だ。」との指摘があった。正にそのとおりである。
基地周辺住民の爆音被害を放置する日米両政府の責任を追及したのは評価できるものの、住民救済の砦としての役割を放棄し続ける司法の姿勢は厳しく糾弾されなければならない。
(判決要旨から抜粋) 1.少なくともW 7 5以上の地域に居住する原告らには, ①話,電話聴取やテレビ・ラジオの視聴,勉強, 読書等,休息や家族 団らん等の日常生活の様々な面での妨害,不快感や不安感等の心理的負担又は精神的苦痛,睡眠妨害, ②高血圧症発生の健康上の悪影響のリスク増大 ③これらはいずれもW値の上昇に伴って増加している ④航空機騷音は,騒音の高感受性群に属する子どもにより大きな影 響を及ぼしている可能性がある ⑤戦争経験を有する住民らにとっては, 戦争時の記憶,不安をよみがえらせ, より大きな不安を与えるであろうこ 2.本件飛行場周辺のかなり広汎な地域において,航空機騒音環境基準(環境省・航空機騒音環境基基準(Lden) 3.日本の防衛政策及び外交政策上の利益は,国民全体が等しく享受するものである一方で, 本件飛行場における合衆国軍隊の活動は,その周辺住民という一部少数者に各種の軽視することのできない被害を及ぼしている。そうすると,国民全体が利益を受ける一方で,原告らを含む一部少数者に特別の犠牲が強いられているといわざるを得す, こには,看過することのできない不公平が存する。 4.住宅防音工事については,住民の生活の本拠に到達する騒音を軽減させる直接的な対策である・・・しかし,他方で,住宅防音工事による原告らの被害の軽減効果には様々な限界がある。 5.被告は,騒音の発生源である航空機の運航等に対する音源対策として,被告とアメリカ合衆国との間で合意された航空機騒音規制措置(騒音防止協定)など・・・指摘している。しかし,・・・十分に履行されているとはいい難く,本件飛行場周辺地域の騒音曝露状況に照らすと,航空機騒音規制措置の少なからぬ部分が十分に履行されていない 6.そして,被告がアメリカ合衆国に航空機騒音規制措置の履行を求める措置を具体的に採った事実を認めるに足りる証拠はない。 7.その他の運航対策についても, 一定の早期離陸が制限されるなどの効果を上げたものが見られるものの, 抜本的に原告らの騒音曝露状況が改善したとは認められない。 8.昭和4 0年代半ばには既に本件飛行場周辺で航空機騒音による影響が社会的に問題となっていたにもかかわらず,今日に至るまで, アメリカ合衆国又は被告によって抜本的な被害防止策が採られずに,原告らを含む本件飛行場の周辺住民が航空機騒音による被害に曝されている 9.第一次嘉手納基地爆音訴訟において,本件飛行場における航空機の運航等から生じる騒音によって周辺住民らに受忍限度を超える違法な被害が生じていることを認定し,被告に損害賠償を命じた判決が確定した平成1 0年からは既に1 8年以上,第二次嘉手納基地爆音訴訟の同様の判決が確定した平成2 3年1月からは既に4年以上が経過しているものの,アメリカ合衆国又は被告による被害防止対策に特段の変化は見られないことからすれば,周辺住民に生じている違法な被害が漫然と放置されていると評価されてもやむを得ず 10.座喜味以北の原告らについて |