平成29年6月23日沖縄全戦没者追悼式における安倍首相のあいさつ。その内容は空虚で、自らの沖縄差別の所業を隠そうとする欺瞞に満ちた内容だ。吐き捨てる思いで聞いたのは私一人ではないだろう。
沖縄戦は県民80万人口の沖縄に、50万人の米軍が投入された戦争だった。安倍首相の指摘する20万人死者は人口の4分の1を失うもの。米軍の攻撃、防衛隊、学徒隊、強要集団自死等で犠牲になった命は、安倍首相の言う「二十万人もの尊い命が失われ」は的外れであり、国策、沖縄切り捨て作戦による犬死だった、というべきだ。
さらに「私たちが享受する平和と繁栄は、沖縄の人々の、言葉では言い表せない塗炭(とたん)の苦しみ、苦難の歴史の上にあることをかみ締めながら」と沖縄の歴史に思いを致すかのように言葉をつなぐ。
しかし、「苦難の歴史」は、現在も、連綿と続く。
普天間・嘉手納両基地の爆音は激化し、米州軍機等の外来機の飛来、相次ぐパラシュート訓練の強行、オスプレイ墜落、米軍人・軍属による事件事故は後をたたず、現在も連綿と続く「苦難の歴史」を過去のものとして葬り去ろうとする、安倍首相の企みを見抜かなければならない。
「沖縄の方々には、永きにわたり、米軍基地の集中による大きな負担を担っていただいており、この現状は到底是認できるものではありません。政府として、基地負担軽減のため、一つ一つ確実に結果を出していく決意であります。」このくだりは正論だ。
ただ、「基地負担軽減」ではだめだ。基地負担除去でなければならない。負担軽減は軽減する側の都合であり、沖縄が求める内容が実現されることはない。それはこの間の歴史が証明する。基地負担除去でなければだめだ。
ところが、正論を吐いたあとのくだりは最悪だ。
「昨年十二月には、二十年越しの関係者の御努力により、県内の米軍施設の約二割に相当する北部訓練場の過半、本土復帰後最大の返還が実現しました。今後、地元の皆様の御意見を伺いながら、地域振興に向けて、基地の跡地利用を政府として最大限支援してまいります。」
返還された北部訓練場の84.9%が国有地、公有地(地方公共団体等)が14.8%、民有地は0.3%だ。返還地のほとんどが国有地。この返還により、沖縄が潤うことなどない。それどころか、今後、基地に再提供されないように監視しなければならない。これが実態だ。
本HM記事参照(12/24)在沖北部訓練場一部返還の内実。返還地利用のあり方を監視しなければならない。(12月22日付朝日新聞より)
「これからも、できることは全て行う。沖縄の基地負担軽減に全力を尽くしてまいります。」との決意は、微塵も実現されることはない。
式典後の記者会見で、安倍首相は辺野古埋め立て強行の意思をあらためて示した。
自らの言葉が、矛盾に満ちた空虚なものでありことを感じることなく、真顔で原稿を読む姿に信頼に値するものは何に一つない。
即刻退陣いただくのが最善だ。